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水いぼに処方される薬と医師の判断基準
水いぼの治療で皮膚科を受診すると、医師は患者の状態を詳細に診察し、いくつかの治療選択肢の中から最適なものを提案します。その際に処方される薬や行われる処置は、水いぼの数、大きさ、場所、炎症の有無、そして患者の年齢や生活環境、本人の希望などを総合的に考慮して決定されます。一般的な水いぼに対する薬物療法としては、まず角質溶解作用を持つ薬剤が挙げられます。サリチル酸ワセリン軟膏やスピール膏などがこれに該当し、水いぼの頂点を柔らかくし、自然な脱落を促したり、物理的な除去を容易にしたりする目的で使用されます。ただし、これらの薬剤は周囲の正常な皮膚に刺激を与える可能性があるため、塗布範囲や期間には注意が必要です。また、硝酸銀ペーストのような薬剤は、水いぼの組織を化学的に凝固させることで除去を試みるものですが、痛みを伴うことや色素沈着のリスクがあるため、使用は限定的です。近年では、免疫応答を調整する外用薬が用いられることもあります。例えば、イミキモドクリームは、本来は尖圭コンジローマなどの治療薬ですが、水いぼに対しても局所の免疫反応を高めることでウイルスの排除を促す効果が期待され、難治性の水いぼに対して医師の判断で処方されることがあります。ただし、保険適用外となる場合が多く、また皮膚刺激などの副作用も考慮しなければなりません。薬物療法以外では、専用のピンセット(鑷子)で水いぼの内容物を一つ一つ摘出する物理的な除去が最も確実で即効性のある治療法とされていますが、痛みを伴うため、特に小児の場合は麻酔テープ(リドカインテープなど)を事前に貼付して痛みを軽減する処置が一般的です。医師がどの治療法を選択するか、どの薬を処方するかの判断基準は、第一に「患者への負担の少なさ」と「治療効果のバランス」です。例えば、幼い子供に対しては、痛みの強い治療は避け、経過観察や刺激の少ない外用薬から試すことが多いでしょう。一方で、水いぼの数が非常に多い場合や、プールなどで早期の除去が求められる場合には、多少の痛みを伴っても物理的な除去を優先することもあります。いずれにしても、医師は患者や保護者と十分にコミュニケーションを取り、治療方針について合意形成を図りながら進めていくことが重要です。