現代社会において、ストレスは様々な心身の不調を引き起こす要因となりますが、胸の苦しさもその一つとして現れることがあります。ストレスが原因で胸が苦しくなる場合、どの診療科を受診すれば良いのでしょうか。また、どのようなメカニズムで起こるのでしょうか。ストレスによる胸の苦しさの代表的なものに、「心臓神経症(不安神経症の一型)」や「パニック障害」、「過換気症候群(過呼吸症候群)」などがあります。これらの場合、主な受診先としては、心療内科や精神科が挙げられます。心療内科は、ストレスなどの心理的な要因が身体症状として現れる「心身症」を専門としており、精神科は、より広範な精神疾患全般を扱います。ストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れやすくなります。自律神経は、心臓の拍動や呼吸、消化などの機能をコントロールしているため、そのバランスが崩れると、動悸や息切れ、胸の圧迫感、めまい、吐き気、手足のしびれといった様々な身体症状が現れることがあります。例えば、心臓神経症では、心臓自体には器質的な異常がないにもかかわらず、心臓病を心配するあまり、胸の痛みや動悸、息苦しさなどを強く感じてしまいます。パニック障害では、突然、理由もなく強い不安感や恐怖感に襲われ、動悸、呼吸困難、めまい、発汗、手足の震えなどのパニック発作が起こります。この時、胸が締め付けられるような苦しさを感じることも少なくありません。過換気症候群は、不安や緊張などから呼吸が速く浅くなり、血液中の二酸化炭素濃度が低下することで、息苦しさや胸の圧迫感、手足のしびれ、めまいなどが現れる状態です。これらの症状は、循環器系や呼吸器系の重大な病気と症状が似ているため、まずは内科(循環器内科や呼吸器内科など)を受診し、身体的な異常がないことを確認することが重要です。内科的な検査で明らかな異常が見つからず、ストレスが原因である可能性が高いと判断された場合に、心療内科や精神科への受診を勧められることがあります。心療内科や精神科では、カウンセリングや認知行動療法といった心理療法や、必要に応じて抗不安薬や抗うつ薬などの薬物療法が行われます。ストレスによる胸の苦しさは、決して気のせいではありません。適切な専門家のサポートを受けることで、症状の改善が期待できます。