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ノロウイルス塵埃感染とは何か
ノロウイルスは、直接的な空気感染(飛沫核感染)はしないとされていますが、それに近い形で感染が広がる可能性のある経路として「塵埃感染(じんあいかんせん)」が挙げられます。これは、感染者の便や特に嘔吐物に含まれるウイルスが、乾燥して微粒子となり、ホコリ(塵埃)と共に空気中に舞い上がり、それを吸い込むことで感染する経路です。ノロウイルスは乾燥に強く、環境中で長時間生存する能力を持っています。そのため、嘔吐物などが適切に処理されなかった場合、床やカーペット、家具などに付着したウイルスが、数週間から数ヶ月にわたって感染力を保ち続けることがあります。これらの場所に付着したウイルスが、人の動きや掃除、換気などによってホコリと共に舞い上がり、空気中を漂います。このウイルスを含んだホコリを吸い込んでしまうと、たとえ少量であっても、感染力の強いノロウイルスは体内に侵入し、発症に至る可能性があります。特に、乾燥しやすい冬場や、換気が不十分な室内では、塵埃感染のリスクが高まると考えられています。また、保育園や学校、高齢者施設など、集団生活を送る場所では、一人が嘔吐した場合、その処理が不適切だと、広範囲にウイルスが拡散し、多くの人が塵埃感染によって次々と感染してしまうケースも報告されています。この塵埃感染の状況が、あたかも「空気感染」しているように見えるため、誤解を招きやすいのです。塵埃感染を防ぐためには、まず嘔吐物や便を処理する際に、ウイルスを飛散させないように細心の注意を払うことが最も重要です。処理の際にはマスクや手袋を着用し、静かに拭き取り、すぐに密閉して廃棄します。そして、汚染された場所とその周辺を、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤を希釈したもの)で徹底的に消毒します。床などを掃除機で吸い取る場合は、排気によってウイルスをまき散らさないように、窓を開けて換気しながら行い、掃除機のゴミパックはすぐに密閉して捨てるなどの配慮が必要です。また、日常的に部屋の換気を良くし、湿度を適切に保つことも、ホコリの舞い上がりを抑え、塵埃感染のリスクを低減するのに役立ちます。ノロウイルスの感染力の強さを念頭に置き、環境からの感染にも注意を払うことが大切です。