外反母趾は、足の親指が変形するだけでなく、足全体のバランスを崩し、他の様々な足のトラブルを併発しやすいという特徴があります。外反母趾と診断された場合は、これらの併発しやすいトラブルにも注意を払うことが大切です。まず、よく見られるのが「内反小趾(ないはんしょうし)」です。これは、足の小指が親指側に曲がり、付け根の関節が外側に突き出す変形で、外反母趾とは逆の方向に起こります。外反母趾と同様に、先の細い靴やヒールの高い靴が原因となることが多く、外反母趾と内反小趾の両方を合併している人も少なくありません。次に、「ハンマートゥ」や「クロウトゥ」といった足の指の変形も起こりやすくなります。ハンマートゥは、足の指の第二関節が「くの字」に曲がってしまう変形で、クロウトゥは、足の指の付け根の関節が反り返り、第一関節と第二関節が曲がってしまう鉤爪(かぎづめ)のような変形です。これらの変形は、外反母趾によって足のアーチが崩れたり、足の指の筋力バランスが悪くなったりすることで生じやすくなります。変形した指の関節が靴に当たってタコやウオノメができたり、痛みを伴ったりすることがあります。また、外反母趾によって足の横アーチが低下すると、「開張足(かいちょうそく)」という状態になりやすくなります。開張足になると、足の指の付け根のあたりに負担が集中し、「中足骨頭痛(ちゅうそくこっとうつう)」と呼ばれる痛みが生じたり、その部分にタコができやすくなったりします。さらに、足のアーチが崩れることで、「足底腱膜炎(そくていけんまくえん)」を発症するリスクも高まります。足底腱膜炎は、足の裏にある足底腱膜という腱組織に炎症が起こり、かかとや土踏まずに痛みが生じる病気です。外反母趾によって歩行時の足裏への負担が偏ることが原因の一つと考えられています。その他、外反母趾によって突き出た親指の付け根の部分(バニオン)が靴に擦れて炎症を起こす「バニオン炎」や、爪が食い込んで炎症を起こす「陥入爪(かんにゅうそう)」なども、外反母趾に伴って起こりやすいトラブルです。これらの併発しやすい足のトラブルは、外反母趾の症状をさらに悪化させたり、新たな痛みや不快感を引き起こしたりする可能性があります。そのため、外反母趾の治療を行う際には、これらの併発疾患の有無も確認し、必要に応じて同時に治療を進めていくことが重要です。
外反母趾と併発しやすい足のトラブル