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女性特有の胸の苦しさの原因
胸が苦しいという症状は、男性だけでなく女性にも起こり得ますが、女性の場合、男性とは異なる特有の原因や、症状の現れ方に違いが見られることがあります。まず、ホルモンバランスの変化が胸の苦しさに関与することがあります。例えば、月経前症候群(PMS)の一症状として、胸の張りや痛み、圧迫感を感じる女性がいます。これは、女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の変動が影響していると考えられています。また、更年期に入ると、女性ホルモンの急激な減少に伴い、自律神経のバランスが乱れやすくなり、動悸や息切れ、胸の不快感、ほてり、発汗といった様々な不定愁訴が現れることがあります。これを更年期障害と呼び、胸の苦しさもその一つとして認識されています。次に、心臓の病気に関しても、女性特有の注意点があります。心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患は、男性に多い病気というイメージがありますが、女性も閉経後は発症リスクが高まります。そして、女性の虚血性心疾患の症状は、男性に見られる典型的な胸痛(胸の中央部の圧迫感など)とは異なり、非典型的な症状で現れることがあると言われています。例えば、胸の痛みではなく、息切れや倦怠感、胃の不快感、背中の痛み、顎の痛みなどが主な症状となることがあり、診断が遅れる原因となることもあります。また、「微小血管狭心症」という、心臓の太い冠動脈には異常がないものの、より細い微小血管の機能障害によって胸痛が生じるタイプの狭心症は、比較的女性に多いとされています。ストレスやホルモンバランスの乱れが関与していると考えられています。さらに、乳腺の病気(乳腺症、乳腺炎、乳がんなど)が、胸の痛みや張り、しこりとして感じられ、それが胸の苦しさとして認識されることもあります。また、肋間神経痛や帯状疱疹といった神経系の痛みが、胸部に起こることもあります。これらのように、女性の胸の苦しさの原因は多岐にわたります。ホルモンバランスの変化によるものから、心臓病、乳腺疾患、精神的な要因まで様々です。症状が続く場合や、気になる場合は、まずはかかりつけ医や婦人科、あるいは症状に応じて循環器内科や乳腺外科などに相談し、適切な診断を受けることが大切です。