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胸が苦しい時の応急処置と注意点
突然、胸が苦しくなった時、医療機関を受診するまでの間に、少しでも症状を和らげ、悪化を防ぐためにできる応急処置と、その際の注意点について知っておくことは重要です。まず、最も大切なのは安静にすることです。座ったり、横になったりして、楽な姿勢をとりましょう。体を動かすと心臓や肺に負担がかかり、症状が悪化する可能性があります。衣服が体を締め付けている場合は、ベルトやネクタイ、ブラジャーなどを緩めて、呼吸をしやすくします。次に、深呼吸を試みることです。ゆっくりと鼻から息を吸い込み、口からゆっくりと吐き出すことを繰り返します。パニックにならず、落ち着いて呼吸することで、不安感が和らぎ、呼吸が楽になることがあります。ただし、過呼吸症候群の場合は、深呼吸が悪化を招くこともあるため、ビニール袋を口に当てて呼吸する(ペーパーバッグ法)などの対処が必要ですが、これは医師の指示がない限り自己判断で行うべきではありません。もし、以前に医師から狭心症の発作止めとしてニトログリセリン製剤(舌下錠やスプレー)を処方されている場合は、指示通りに使用します。通常、舌の下に入れて溶かすか、口腔内にスプレーします。効果が現れるまで数分かかることがあります。ただし、血圧が低い場合や、特定の薬剤(ED治療薬など)を服用している場合は使用できないため、必ず医師の指示を守りましょう。水分補給については、少量であれば問題ありませんが、冷たい飲み物や炭酸飲料は避け、常温の水や白湯などをゆっくりと飲むようにしましょう。自己判断で市販の鎮痛薬や胃薬などを服用するのは避けるべきです。症状の原因が特定できていない段階で薬を服用すると、かえって症状を悪化させたり、診断を遅らせたりする可能性があります。そして、最も重要な注意点は、緊急性の高い症状を見逃さないことです。以下のような場合は、ためらわずに救急車を要請してください。突然発症した、経験したことのないような激しい胸の痛み胸の痛みが30分以上続く、あるいはどんどん悪化する冷や汗、吐き気・嘔吐、呼吸困難、意識が遠のく感じ、失神を伴う唇や爪が紫色になる(チアノーゼ)脈が極端に速い、遅い、または不規則これらのサインは、心筋梗塞や大動脈解離など、命に関わる病気の可能性があります。応急処置に時間をかけすぎず、速やかに医療機関を受診することが最優先です。