唇や口の中にできた粘液嚢胞。痛みがほとんどないこともあり、「放っておいても大丈夫かな?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。多くの場合、粘液嚢胞は良性の嚢胞であり、放置していても自然に小さくなったり、破れて治癒したりすることもあります。特に、小さなものであれば、数週間から数ヶ月のうちに自然に消えてしまうケースも少なくありません。しかし、必ずしも全ての粘液嚢胞が自然に治るわけではなく、放置することによっていくつかの問題が生じる可能性も考慮しておく必要があります。まず、自然に治癒せずに、嚢胞が大きくなっていく場合があります。嚢胞が大きくなると、食事や会話の際に邪魔になったり、発音がしにくくなったりするなど、日常生活に支障をきたすことがあります。また、見た目も気になるようになり、審美的な問題から精神的なストレスを感じる人もいるでしょう。次に、嚢胞が破れては再発するというサイクルを繰り返すことがあります。嚢胞が破れると一時的に小さくなりますが、原因となっている小唾液腺が残っている限り、再び唾液が溜まって嚢胞が形成される可能性があります。これを何度も繰り返しているうちに、嚢胞の壁が厚くなったり、周囲の組織が硬くなったりして、線維化と呼ばれる状態になることがあります。線維化した粘液嚢胞は、自然治癒しにくく、治療を行う際にも切除がやや難しくなることがあります。また、嚢胞が破れた際に、傷口から細菌が感染し、炎症を起こしたり、化膿したりするリスクも考えられます。そうなると、痛みや腫れが悪化し、治療が必要になることもあります。さらに、非常に稀ではありますが、粘液嚢胞と似たような症状を示す他の疾患(例えば、血管腫やリンパ管腫、あるいは悪性の腫瘍など)である可能性も完全に否定することはできません。自己判断で「粘液嚢胞だから大丈夫」と放置していると、これらの疾患の発見が遅れてしまう危険性もあります。したがって、粘液嚢胞ができた場合、すぐに治療が必要というわけではありませんが、数週間経っても改善しない、大きくなってくる、何度も繰り返す、あるいは他に気になる症状があるといった場合は、一度専門医(歯科、口腔外科、皮膚科など)の診察を受けることをお勧めします。医師に相談することで、正確な診断と、それぞれの状況に応じた適切なアドバイスや治療法を提案してもらうことができます。