子供が成長し、いずれは内科や他の専門診療科へ移行する時期がやってきます。では、具体的にいつ頃、どのようなタイミングで移行を考えれば良いのでしょうか。この移行のタイミングにも、明確なルールがあるわけではありませんが、いくつかの目安や考え方があります。一般的に、**「15歳(中学校卒業)」**が一つの区切りとして意識されることが多いです。これは、小児科の対象年齢の目安とされることが多いためです。しかし、これはあくまで一例であり、もっと早い段階で移行を勧められることもあれば、高校生になっても引き続き小児科で診てもらえるケースもあります。移行を考える上で重要なのは、子供の健康状態と、かかっている病気の種類です。例えば、風邪や胃腸炎といった急性疾患であれば、高校生になってからは内科を受診するのが一般的になるでしょう。多くの内科では、高校生以上の患者さんを対象としています。一方、気管支喘息やアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、てんかん、発達障害、先天性の心疾患など、乳幼児期から継続的な治療や管理が必要な慢性疾患を抱えている場合は、事情が異なります。このような場合は、患者さんの状態を長年把握している小児科医が、引き続き診療を担当する方が望ましいケースが多いです。小児科医は、成長発達の過程を考慮したきめ細やかな診療を得意としており、思春期特有の心身の変化にも対応しやすいというメリットがあります。しかし、いつまでも小児科にかかり続けるわけにもいきません。将来的には、成人向けの診療科へ移行する必要があります。この移行のタイミングは、疾患の種類や重症度、患者さんの自立度、そして受け入れ先の専門医の状況などによって異なります。多くの場合は、小児科医と相談しながら、高校生から20歳前後くらいまでの間に、徐々に移行を進めていくことになるでしょう。この移行プロセスを「トランジション(移行期医療)」と呼び、近年その重要性が認識されています。トランジションにおいては、患者さん自身が自分の病気について理解を深め、自己管理能力を高めていくことが求められます。そして、小児科医と成人診療科の医師が連携を取りながら、スムーズな引き継ぎが行われることが理想的です。大切なのは、年齢で一律に区切るのではなく、個々の状況に合わせて、最適なタイミングと方法で移行を進めていくことです。