子どもの体に数個のポツポツとした発疹、熱もなく本人も至って元気。このような「軽い」症状の場合、保護者としては「これは手足口病なのだろうか?もしそうなら他の子にうつるのだろうか?」と判断に迷うことがあるでしょう。特に保育園への登園や兄弟との接触においてこの疑問は非常に重要です。結論から言えばたとえ症状が非常に軽く本人が元気であっても、手足口病である以上他者への「感染力はあります」。そしてその感染力は決して弱いわけではありません。この点を理解するためには手足口病のウイルスの排出経路と期間を知っておく必要があります。手足口病の原因となるエンテロウイルスは、主に三つの経路で体外に排出されます。一つは咳やくしゃみによって喉から排出される「飛沫」。二つ目は水疱の中の液体に含まれる「ウイルス」。そして三つ目が最も厄介で長期間にわたって排出が続く、便の中の「ウイルス」です。症状が軽い場合、高熱や激しい咳は見られないため飛沫による感染リスクは重症例に比べて低いかもしれません。発疹の数が少なければ水疱が破れて接触感染する機会も少ないでしょう。しかし最大の問題は便からのウイルス排出です。手足口病のウイルスは症状が完全に消えた後も非常に長い期間、具体的には2~4週間にわたって便の中に排泄され続けるという厄介な特徴を持っています。これは症状が軽い場合でも全く同じです。つまり見た目がすっかり健康に見えてもその子の便の中には感染力のあるウイルスがまだたくさん含まれているのです。特に乳幼児の場合、おむつ交換の際に保護者の手にウイルスが付着し、その手で他の子どもに触れたりおもちゃに触れたりすることで容易に接触感染が広がっていきます。トイレトレーニング中の子どもが排便後にうまくお尻を拭けなかったり、手洗いが不十分だったりした場合も同様のリスクがあります。症状の軽さと感染力の強さは決して比例しません。「軽いから大丈夫」という油断こそが集団生活の場において感染を拡大させてしまう最大の原因となるのです。
軽い症状でも手足口病はうつるのか