ヘルパンギーナは夏風邪の代表格として知られ、主に乳幼児がかかる感染症というイメージが強いかもしれません。しかし、近年では大人も感染するケースが増えており、特に注意したいのが「熱なし」で発症するヘルパンギーナです。通常、ヘルパンギーナの主な症状としては、突然の高熱と喉の奥にできる多数の小さな水疱や潰瘍が挙げられます。この喉の強い痛みのために、食事や水分摂取が困難になることも少なくありません。ところが、大人が感染した場合、典型的な高熱が出ない、あるいは微熱程度で済んでしまうことがあるのです。熱が出ないからといって症状が軽いわけではなく、喉の痛みや口内炎のような水疱はしっかりと現れ、強い倦怠感や頭痛を伴うこともあります。むしろ熱がないために、ただの喉の風邪や疲れだと自己判断してしまい、受診が遅れたり、知らず知らずのうちに周囲に感染を広げてしまったりするリスクが高まります。大人の場合、子供からの家庭内感染が多いとされていますが、職場などでの集団感染の可能性も否定できません。熱が出ないヘルパンギーナは、診断がつきにくい側面もあります。医師も、発熱がないと他の咽頭炎や口内炎との鑑別が難しくなることがあります。そのため、喉に強い痛みや複数の水疱が見られる場合は、たとえ熱がなくても早めに医療機関を受診し、ヘルパンギーナの可能性を伝えることが大切です。特に、周囲にヘルパンギーナに罹患している人がいる場合や、夏場に急な喉の痛みが出た場合は注意が必要です。適切な診断を受けることで、対症療法による症状緩和や、他者への感染拡大を防ぐための指示を受けることができます。