唇の腫れは、多くの場合、数日で改善したり、適切な治療によって治癒したりしますが、中には緊急の対応が必要となる危険なケースも存在します。そのようなサインを見逃さず、速やかに医療機関を受診することが、重篤な結果を避けるために非常に重要です。では、どのような場合に緊急を要するのでしょうか。まず、最も注意すべきなのは、唇の腫れが急激に現れ、それに伴って呼吸困難や息苦しさ、声のかすれ、喉の詰まる感じ、顔面全体の著しい腫れ、全身の蕁麻疹、めまい、意識が遠のく感じ、血圧低下といった症状(アナフィラキシーショックの兆候)が現れた場合です。これは、食物アレルギーや薬剤アレルギー、虫刺されなどによって引き起こされる重篤なアレルギー反応であり、生命に関わる危険な状態です。気道が塞がって窒息したり、血圧が急激に低下してショック状態に陥ったりする可能性があるため、一刻を争います。直ちに救急車を要請し、もしアドレナリン自己注射器(エピペンなど)を処方されている場合は、速やかに使用する必要があります。次に、唇の腫れが外傷(事故や転倒などで強くぶつけた場合)によるもので、出血が止まらない、傷が深くぱっくりと開いている、あるいは意識障害や嘔吐などを伴う場合も、緊急の処置が必要です。多量の出血は貧血やショックを引き起こす可能性がありますし、頭部外傷を合併している場合は、脳への影響も考慮しなければなりません。形成外科や救急科のある医療機関を速やかに受診しましょう。また、唇の腫れが細菌感染によるもので、急速に腫れが広がり、高熱や強い痛み、悪寒戦慄などを伴う場合(蜂窩織炎など)も、早期の抗菌薬治療が必要となります。放置すると、感染が周囲の組織や血流に乗って全身に広がり、敗血症などの重篤な状態に至る可能性があります。さらに、非常に稀ではありますが、唇の腫れが悪性腫瘍(がん)の初期症状であることもあります。急に大きくなるしこりや、治りにくい潰瘍、出血しやすいといった特徴が見られる場合は、できるだけ早く専門医(皮膚科や口腔外科など)の診察を受けることが重要です。これらの症状が見られた場合は、「様子を見よう」と自己判断せず、ためらわずに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶようにしましょう。早期の適切な対応が、予後を大きく左右します。
唇の腫れ緊急を要する場合とは