唇の腫れは、アレルギー反応や口唇ヘルペス、歯科的な問題以外にも、様々な原因によって引き起こされることがあります。ここでは、比較的稀ではありますが、唇の腫れの原因となり得るその他の疾患や状態についていくつか紹介します。まず、「肉芽腫性口唇炎(にくげしゅせいこうしんえん)」、別名「メルカーソン・ローゼンタール症候群(部分型)」と呼ばれる疾患があります。これは、原因不明の慢性的な唇の腫れを特徴とする病気で、唇が硬く、ゴムのような弾力を持って腫れ上がります。腫れは持続的であったり、軽快と増悪を繰り返したりします。顔面神経麻痺や溝状舌(舌に深い溝ができる状態)を伴うこともあります。診断には組織検査(生検)が必要となることがあり、治療はステロイド薬の局所注射や内服、免疫抑制剤などが用いられることがありますが、難治性であることも少なくありません。次に、「固定薬疹(こていやくしん)」も唇の腫れの原因となることがあります。これは、特定の薬剤を服用するたびに、同じ部位に繰り返し皮膚症状が現れるもので、唇に生じると円形や楕円形の赤い斑点や腫れ、水ぶくれ、びらんなどを引き起こします。原因となる薬剤を中止することが最も重要ですが、症状に応じてステロイド外用薬などが使用されます。また、虫刺され(蚊、ブヨ、ハチなど)によって、唇がアレルギー反応を起こして腫れ上がることもあります。特に、ハチに刺された場合はアナフィラキシーショックを起こす危険性もあるため、注意が必要です。外傷、例えば唇を強くぶつけたり、誤って噛んでしまったりした場合も、内出血や炎症によって唇が腫れることがあります。この場合は、冷やすことで腫れや痛みを和らげることができますが、傷が深い場合や出血が止まらない場合は医療機関の受診が必要です。さらに、非常に稀ではありますが、血管腫やリンパ管腫といった良性の腫瘍や、悪性腫瘍(皮膚がんなど)が唇に発生し、その症状として腫れが見られることもあります。これらの場合は、徐々に腫れが大きくなったり、しこりや潰瘍を伴ったりすることがあります。気になる症状がある場合は、早めに専門医の診察を受けることが重要です。その他、全身性の疾患、例えばクローン病やサルコイドーシスといった炎症性疾患の一症状として、唇の腫れが現れることも報告されています。