胸が苦しいという症状は、軽い不快感程度のものから、命に関わる危険な状態まで様々です。そのため、どのような場合に緊急性が高いと判断し、速やかに医療機関を受診すべきかを知っておくことは非常に重要です。まず、**「突然発症し、かつ非常に強い痛み」である場合は、緊急性が高いと考えられます。例えば、今まで経験したことのないような激しい胸の痛みや、胸が引き裂かれるような痛み、押しつぶされるような圧迫感が突然現れた場合は、心筋梗塞や大動脈解離、肺塞栓症といった重篤な疾患の可能性があります。これらの病気は、一刻も早い治療が必要であり、ためらわずに救急車を要請すべきです。次に、「痛みが持続する、あるいは悪化していく」場合も注意が必要です。安静にしていても痛みが和らがない、あるいは徐々に痛みが強くなっていく場合は、進行性の病態が考えられます。特に、30分以上続く強い胸痛は、心筋梗塞の典型的な症状の一つです。また、「胸の苦しさに加えて、他の危険な症状を伴う」場合も緊急性が高いと言えます。例えば、冷や汗、吐き気・嘔吐、呼吸困難、意識が遠のく感じ、失神、顔面蒼白、唇や爪が紫色になる(チアノーゼ)、左肩や腕、顎、背中への放散痛などが見られる場合は、重篤な心血管系や呼吸器系の疾患が疑われます。さらに、「脈拍の異常」**も重要なサインです。脈が極端に速い(1分間に120回以上など)、あるいは遅い(1分間に40回以下など)、または不規則で、それが胸の苦しさと関連している場合は、危険な不整脈や心不全の可能性があります。年齢や基礎疾患の有無も考慮に入れる必要があります。高齢者や、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病の既往がある方、あるいは過去に心臓病や脳卒中を起こしたことがある方は、胸の苦しさが現れた場合、より慎重な対応が求められます。これらの症状や状況に当てはまる場合は、自己判断で様子を見たり、我慢したりせず、直ちに救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。救急隊員や医師に、いつから、どのような症状が、どの程度続いているのか、既往歴などを正確に伝えることが、迅速かつ適切な診断と治療に繋がります。「いつもと違う」「これはおかしい」と感じる直感も大切にしましょう。
胸が苦しい時の緊急性の判断