唇の腫れで皮膚科を受診した場合、医師は様々な可能性を考慮して診察を行います。皮膚科で扱われる唇の腫れの原因となる代表的な疾患には、どのようなものがあるのでしょうか。まず、非常に多いのが「接触皮膚炎(せっしょくひふえん)」、いわゆる「かぶれ」です。これは、唇やその周りの皮膚が、特定の刺激物質やアレルゲンに触れることで炎症を起こし、赤み、腫れ、かゆみ、水ぶくれ、ただれなどを生じる状態です。原因としては、口紅やリップクリーム、歯磨き粉、洗顔料といった化粧品や日用品に含まれる成分、あるいはマンゴーやパイナップル、柑橘類といった果物、金属(ニッケルなど)、歯科材料などが挙げられます。原因物質を特定し、それを避けることが治療の基本となります。次に、「血管性浮腫(けっかんせいふしゅ)」、別名「クインケ浮腫」も、唇の腫れを引き起こす代表的な疾患です。これは、皮膚の深い部分や粘膜下組織で血管の透過性が高まり、液体が漏れ出すことで局所的に腫れが生じるもので、唇やまぶた、顔面などが突然腫れ上がります。かゆみは伴わないことが多いですが、ピリピリとした感覚や熱感を伴うことがあります。原因は、食物アレルギーや薬剤アレルギー、物理的刺激、遺伝性のもの、あるいは原因不明の特発性のものなど様々です。抗ヒスタミン薬やステロイド薬の内服で治療します。また、「口唇ヘルペス」も唇の腫れの原因としてよく見られます。これは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の感染によって起こり、唇やその周りにピリピリとした違和感やかゆみが生じた後、小さな水ぶくれが集まってでき、それが破れてかさぶたになります。腫れや痛みを伴うことが多く、再発しやすいのが特徴です。抗ウイルス薬の内服や外用薬で治療します。その他、「アトピー性皮膚炎」の症状の一環として、唇が乾燥したり、炎症を起こして腫れたりすることもあります。この場合は、全身のアトピー性皮膚炎の治療と並行して、唇の保湿や炎症を抑える治療が行われます。稀なケースではありますが、肉芽腫性口唇炎(にくげしゅせいこうしんえん)といった、原因不明の慢性的な唇の腫れや、皮膚がんの一種が唇に発生して腫れることもあります。これらは専門的な診断と治療が必要となります。このように、皮膚科では多岐にわたる唇の腫れの原因疾患を扱っています。
皮膚科で診る唇の腫れの種類