インフルエンザの予防接種を受けた後、注射した場所が赤く腫れたり、熱っぽさを感じたりといった副反応を経験する人がいます。その一方で、全く何も感じない人もいます。この反応の違いから、「副反応が強く出たから、しっかり抗体ができて効果が高いに違いない」あるいは逆に「何も反応がなかったから、効果がないのではないか」といった噂や憶測が生まれることがありますが、これは科学的には正しくありません。ワクチンの副反応の有無や強さと、予防効果の高さに直接的な相関関係はないとされています。まず、副反応がなぜ起こるのかを理解する必要があります。ワクチンを接種すると、私たちの体はそれを「異物」と認識し、体を守るための防御反応を開始します。この初期の防御反応が、炎症として現れるのが副反応です。具体的には、免疫細胞が接種部位に集まってきて、サイトカインという物質を放出することで、腫れや痛み、発熱などが引き起こされます。これは、体が正常に免疫システムを作動させている証拠ではありますが、この初期反応の強さには非常に大きな個人差があります。一方、インフルエンザウイルスに対する特異的な「抗体」が作られ、長期的な予防効果が確立されるのは、この初期反応とは別の、より高度で複雑な免疫の仕組みによるものです。B細胞というリンパ球が活性化され、ウイルスを無力化する抗体を産生し始めるプロセスです。この抗体産生の効率は、副反応の強弱とは必ずしも連動しません。つまり、副反応が軽くても、体内ではしっかりと抗体が作られているケースは全く珍しくありませんし、逆に副反応が強くても、期待されるほどの抗体価が上がらないこともあり得ます。副反応はあくまで一時的な体の反応であり、それによってワクチンの効果を自己判断するのは避けましょう。大切なのは、副反応の有無に関わらず、接種から約二週間後にはウイルスに対する防御力が備わっていると信じ、安心してシーズンを過ごすことです。