外反母趾の症状を和らげたり、進行を遅らせたりするために、自宅でできるセルフケアもいくつかあります。しかし、セルフケアだけで外反母趾を完全に治すことは難しく、その限界も理解しておくことが大切です。まず、セルフケアとして取り組めることの一つに、「靴の選び方の見直し」があります。先の細い靴やヒールの高い靴は、足の指を圧迫し、外反母趾を悪化させる大きな原因となります。できるだけ、つま先にゆとりがあり、指が自由に動かせるスペースのある靴を選びましょう。また、かかとがしっかりと安定し、足の甲が固定できる紐靴やストラップ付きの靴が理想的です。靴底には適度なクッション性があり、衝撃を吸収してくれるものが良いでしょう。次に、「足の指の運動やストレッチ」も有効です。足の指で床に置いたタオルをたぐり寄せる「タオルギャザー」や、足の指を大きく開いたり閉じたりする「グー・パー運動」、親指を外側にゆっくりと引っ張るストレッチなどは、足の指の筋力を強化し、柔軟性を高めるのに役立ちます。これらの運動を、毎日少しずつでも継続することが大切です。また、市販されている「外反母趾用のサポーターやパッド」を使用するのも一つの方法です。親指を正しい位置に矯正する効果のあるサポーターや、突き出た部分を保護して靴との摩擦を軽減するパッドなど、様々な種類があります。自分に合ったものを選び、日中や就寝時に使用することで、痛みの緩和や変形の進行抑制が期待できる場合があります。入浴中や入浴後に、足の指や足裏をマッサージすることも、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげるのに効果的です。しかし、これらのセルフケアは、あくまで症状の緩和や進行の抑制を目的としたものであり、すでに変形してしまった骨の形を元に戻すことはできません。特に、外反母趾の変形が進行し、痛みが強い場合や、日常生活に支障が出ている場合は、セルフケアだけでは十分な効果が得られないことが多いです。また、自己流のケアが、かえって症状を悪化させてしまう可能性も否定できません。例えば、無理なストレッチや、合わない装具の使用は、炎症を引き起こしたり、他の足のトラブルを招いたりすることもあります。セルフケアで改善が見られない場合や、症状が悪化している場合は、早めに整形外科や足の専門外来を受診し、専門医の診断と適切な治療を受けることが重要です。
外反母趾のセルフケアと限界